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福澤全集緒言

二十 頁

の佳境に(たつ)せんとするの本願にして、(かつ)初一念(しよいちねん)を変じたるなき今日、 到底先生の忠告には従うべからずと覚悟して、その忠告と同時に(かえつ)てます 〱俗文主義の志を固くしたるこそ是非なき次第なれ。(また)これに(つい)一些事(いつさじ)を記さんに、余が印章に三十一谷人の五字を(こく)したるものあり。 (こ)れは(たに)にも(やま)にも地名などに縁あるに(あら)ず、三十一を一字にすれば 世の字にして、谷人(こくじん)の人を扁にして左右に並ぶれば俗の字と(な)るが故 に、(すなわ)ち世俗の意を寓したるものにして、前年、竜洲(りようしゆう)先生の文談を聞きし 後に特に彫刻せしめたる戯作(ぎさく)思付(おもいつ)きの(いん)なり。 又王政維新後、明治の初年、大阪に医学校ようのものを官設し、余が旧友 中この学校に奉職して医書を飜訳(ほんやく)する者あり。或時(あるとき)余は大阪に遊びその 学校を一見せしに、在校の一友、今その人を記憶せず(坪井芳洲(つぼいほうしゆう)かと覚ゆ)、 余を(むかえ)て共に語り種々(しゆじゆ)の原書など見る中に、友人が書中の一原字(いちげんじ)(し)

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