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デジタルで読む福澤諭吉
各巻の解説



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タイトル 増訂華英通語. 上
別タイトル English-Japanese dicitonary
著者 子卿 (Author)
福澤, 諭吉 (Translator)
出版地 東京
出版者 快堂蔵板
出版年 1860 (万延元)
識別番号 福澤関係文書(マイクロフィルム版)分類: F7 A01-01
請求記号: 110X@351@2

[解説]

福沢の最初の出版物である。
 サンフランシスコで出版されていた清国人子卿著の「華英通語」という英華対訳の単語集を、福沢が万延元年に咸臨丸に搭じて初めてアメリカに渡ったとき、同地で買い求めて帰国の後、これに英語の発音と華語の訳語の日本読みとを片仮名でつけ、「増訂」の二字を冠して出版したものである。
 英語の発音に関する福沢の苦心を見るべきで、特にVの字の発音を原音に近からしめるために、ウワの二字に濁点をつけてヴブという新しい文字を創案したのは、福沢の功績として記憶されてよいことである。そのほかにも、たとえばPlanetプラヌネト、Windウヰヌド、などのように、文字の大小の組合せにより、原音に近接しようとした苦心のあとが見られる。
 この頃までのわが国の英語英学書に見られる発音は、多くはオランダ語訛りか横浜あたりのビジョン・イングリシに類するものであったが、「増訂華英通語」あたりから、よほど英語の正音に近い発音表示が見られるようになり、その意味でこの書はわが国の英語学発達史上に注目すべき位置を占めるものである。
 なおこの書の原本の中国語は、北京官話でなく、広東語であるとの考証が、中国語学者から報告されている。
 「増訂華英通語」には二種類の版本がある。美濃判二冊本と半紙判一冊本とで木文の匡郭は両者とも一七・八× 一二・五cmであるから同一版木で印刷されたものであろう。
 美濃判二冊本は鞘形卍つなぎの地紋の淡茶色表紙に、左肩に「増訂華英通語上(下)」の文字を子持罫でかこんだ題箋が貼ってある。見返しは紅染め紙に「万延庚申/ 増訂華英通語/快堂蔵版」と記され、上巻は訳者凡例二丁、原序一丁半、目録半丁、原著者凡例半丁、アルファベット半丁、本文一丁から四十九丁まで。下巻は本文五十丁から九十九丁まで。奥附はない。
 半紙判一冊本は無地または鞘形卍つなぎ地紋の黄色の表紙に「増訂華英通語完」の文字を子持罫でかこんだ題箋を貼り、見返しは白紙に前記美濃判と同文を刷り、その他はすべて美濃判と同じ体裁である。美濃判二冊本と同じ内容を一冊に合綴し仕上がり寸法を半紙判にしただけの違いである。
 ただ仔細に両者を検討すると、美濃判の方が半紙判よりも刷りがウブである。殊に美濃判では福沢の訳語や発音が未確定のため、版木のまま黒く残してある部分が初刷りのものには見られ、後にそれを彫り起しまたは削り去りて刷ったものもあるが、半紙判には更らに美濃判本の誤りを埋め木して訂正した跡も見られるから、美濃判二冊本を初刷り、半紙判一冊本を後刷りと断定してよい。


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