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デジタルで読む福澤諭吉
各巻の解説



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タイトル 西洋旅案内. 上
別タイトル Guide to travel in the western world
著者 福澤, 諭吉 (Author)
出版地 東京
出版者 慶應義塾出版局
出版年 1867 (慶応3)
識別番号 福澤関係文書(マイクロフィルム版)分類: F7 A04-01
請求記号: 福 4-1 著作

[解説]

福沢は慶応三年に幕府の軍艦受取委員の一行に随行して二度目のアメリカ行をしたが、旅行中、上司の命を拒んだり不従順であったというので、帰朝後に謹慎を命ぜられて、域中の外国方へ出仕を差止められた。その謹慎中に執筆したのがこの書である。
 木版半紙判二冊本。二二・七×一五・六㎝。表紙は鞘形卍つなぎの地紋の濃藍色。左肩に子持罫の枠の中に「西洋旅案内 上(下)」の題箋を貼り、見返しは黄色の和紙を用い、子持罫の枠の中を簡単な飾り罫で縦三つに区切り、「福沢諭吉著/ 西洋旅案内/ 附録万国商法/慶応三年丁卯初冬 尚古堂初兌」と記してある。上巻は序文二丁、目録二 丁、折込口絵一面、本文三十丁。下巻は第三十七丁から第七十四丁まで。その第七十四丁ウラの末尾に「毎部以此印為蔵版之証」と印刷した下に「Copyright of 福沢氏」と陽刻した長方形朱印が押捺してある。
 この書には偽版が夥しく出されたが、前掲「西洋事情」偽版の項に詳述したから、就いて参照せられたい。
 この書は外国為替や保険のことに触れたわが国最初の文献である。外国為替の敍述に就いては福沢の体験が基礎になっている。福沢は幕府の軍艦受取委員に随行して万事の世話を取りしきることになり、横浜のウォールスフォール会社で外国為替の説明を聞いて、二時間ばかり押問答の末ようやく釈然としたが、同社員から君はよほど了解の早い人だと賞められたということが、「福沢全集緒言」に記されている。しかし、その了解
 の早かった福沢も、実地に当っては失敗している。福沢は会社から渡された為替手形三通(オリジナルとデュプリケートとトリプリケート) の説明を聞き、航海中不時の災厄が起ったとき、それぞれ持ち主を違えておけば、万一その一通が失なわれても他の手形を証拠として金を受け取ることができる、一通を別の便船で送るようにすれば、万一乗船が沈没しても、金だけは無事であるとの話に、オリジナルとデユプリケートとを委員長
 と副委員長とに持たせ、トリプリケートを横浜の領事に頼んで次の便船で送るように手配してアメリカへ出発した。ところがニューヨークに到着してみると、三通の手形が揃わぬと支払いができないと言われ、百方奔走して保証人を立てるなどして、さんざんな苦労の結果やっと金を手にすることができたという苦がい経験をなめている。本書中にその経験に基く懇切な説明が記してある。
 保険については、まだこの頃には保険という訳語ができていなかったので、福沢は「災難請合」の訳語を作り出して、生命保険と火災保険と海上保険とを説明している。福沢はこのアメリカ行で夥しい洋書を買って帰ったが、その荷物を海上保険にかけた事実がある。
 この書は上下二冊本であるが、別にこれとそっくり同じ体裁で、慶応義塾同社吉田賢輔纂輯「西洋旅案内外篇」という一冊本が、明治二年己巳仲春尚古堂発兌で出版されている。見返しに「慶応義塾蔵版之印」が押捺されているから、福沢の諒解の下にこの書名をつけたものであろうが、吉田の単独の著作と見るべきである。偽版ではない。


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