2017/04/06 新たに 「慶應義塾大学メディアセンターデジタルコレクション」 を公開しました。

Digital Gallery of Rare Books & Special Collections
インキュナブラコレクション
[ Japanese / English ]
013 アリストテレス 『著作集(ラテン語)』 (ヴェネツィア、ヨハネス&グレゴリウス・デ・グレゴリイス印行、1496年7月13日)
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front-pde front-pde 2Q5v 2Q5v
2Q6r 2Q6r upper cover upper cover
lower cover lower cover
Author : Aristoteles [Aristotle]
Title : Opera [Latin]
Language : lat
Format : fº
Place of Publication : Venice
Printer : Johannes and Gregorius de Gregoriis, de Forlivio, for Benedictus Fontana
Date of Publication : 1496-07-13
Binding : Contemporary Italian calf-backed wooden boards, spine with blind-tooled diapered design and floral tools, two leather and embossed brass clasps (lacking two), foot of spine renewed.
Bibliographical Notes : 189 of 508 leaves; a number of woodcut initials throughout; running titles; printer's device on 2Q6r; some contemporary marginalia.
Provenance : 1. Pillone Library. 2. Sir Thomas Brooke, Armitage Bridge House. 3. Pierre Berès.
ISTC : ia00966000
Reference : Goff A966, HC 1659*, BMC V 349, GW 2341, IJL 026, IJL2 033, PP102
Shelfmark : 120X@620@1
Acquisition Year : 1984

 主にレオナルド・ブルーニ(Leonardo Aretino Bruni; 1369-44)の手になるアリストテレス諸著作のギリシャ語からのラテン語翻訳を収める。剥き出しの木板による製本(背の部分は皮になっている)がなされており、表板には『アリストテレスの道徳哲学および形而上哲学』(Philosophia moralis et metaphisica Aristotelis)と記されている。 製本は、近代のものというよりは、初期のものである。
 レオナルド・ブルーニは、イタリア・ルネッサンスにおける高名な人文主義者であり、人文主義(人文学: humanities)の語源となった(studia humanitas)という言葉を最初に用いた人物といわれる。アリストテレスやプラトンの著作を原典のギリシャ語を読み、ラテン語に翻訳したのはこの人文主義プロジェクトの一部である。
 本巻に収められている著作の主なものは1)『形而上学』(Libri metaphisice)、2)『(ニコマコス)倫理学』(Libri ethicorum)、3)ブルーニ訳『エウデモス倫理学』(Liber Aristotelis de moribus ad eudemium discipulum)、4)『政治学』(libri politicorum)、5) ブルーニ訳『経済学』(第一巻)、6) 『大道徳学』(一部)である。以下に示すように、『詭弁論駁論』の断片も含まれている。
 この著作の丁付け(フォリオ・ナンバー)はかなりの混乱をきたしている。まず、この巻に収められた最初の著作である『形而上学』は 第63葉から始まり第118葉で終わっている。その後、第118葉から第170葉まで欠葉しているように見える(以下で述べるように、全体が実際に欠葉しているわけではなく、一部は単なるフォリオ・ナンバーの付け間違いによる)。続いて収められている『倫理学』のフォリオ・ナンバーは第171葉から第199葉まで順にふられているが、この著作の途中の折丁(quire)の区切れで、フォリオ・ナンバーが100に戻り122でこの著作は終わる。この「第199葉」裏(すなわち見開きで左)ページの最後に記されたキャッチ・ワード(次の葉の冒頭句を前葉の最後に記しておくことで折丁の順序が混乱しないようにする工夫)は、次の「第100葉」冒頭句と正しく対応しており、『倫理学』のテクスト自体に混乱はない(したがって、この部分は単なるフォリオ・ナンバーのつけ間違えである)。次の著作である『エウデモス倫理学』は『(ニコマコス)倫理学』に引き続き「第123葉」から「第127葉」までを占めているが、これらすべては一葉ずつ追葉されている。以上の問題は、おそらく、原稿から組版ページ数を計算する際のミスで、「第100葉」は、第200葉の誤りであると考えられる。
 「第127葉」の次は突然「第259葉」となる。この葉の表(見開き右)ページは『詭弁論駁論』(De sophisticis elenchis: 本書ではElenchorum Aristotelis)の最後の頁であり、残りの部分は落ちている。その理由はおそらく、この巻を編んだ人の目当てが同葉の裏から「第313葉」までを占める『政治学』だったからである。次に収められている著作は『経済学』の第一巻であり、「第314葉」から「第316葉」までを占めている(これらはすべて追葉されている)。「第317葉」から「第385葉」までは欠葉である。以上の問題は、不完全な本を、混乱した順番で合本したときに生じたものであるように思われる。
 「第386葉」から「第403葉」までを、この本の最後のアリストテレス著作である『大道徳学』―これはゲオルギウス・ヴァッラ(Georgius Valla; 1430-99)による翻訳―が占める。欄外には、少なくとも二つ以上の異なった字体による書きこみがなされている。
 ヴェネツィアに本拠をおいていた印刷業者ヨハネス&グレゴリウス・デ・グレゴリイスはフォルリ(Forlivium)出身の兄弟である。ヴェネツィアは、1495-97年の時期についていえば、ヨーロッパで大印刷業者がもっとも集中していた都市だった。ポネート・ロカッテリ、トルティ、シモーネ・ベヴィラクァ、ジョヴァンニ・タクィーノ、アルドゥス・マヌティウス(伊名アルド・マヌーツィオ)、アンドレア・トッレザーニ(アルドの義父)、フィリッポ・ピンチョがあげられる。グレゴリイス(グレゴーリ)兄弟はそうした大工房の一つであり、最初にアラビア語文字で印刷本を刊行した業者として知られる。
 
 筆者は、本稿の執筆にあたって、ジョン・ゴールドフィンチ氏に有益な助言を頂いたことを謝して記す。
 
 (YA)

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