2017/04/06 新たに 「慶應義塾大学メディアセンターデジタルコレクション」 を公開しました。

Digital Gallery of Rare Books & Special Collections
インキュナブラコレクション
[ Japanese / English ]
023a アニアヌス 『暦の計算(コンプトゥス)』 (シュトラースブルク/ストラスブール、ヨハン・プリュス、1488年11月14日)
 A1r A1r
front pde front pde rear pde rear pde
A2r A2r A3r A3r
F8r F8r G1r G1r
H5v H5v
Author : Anianus
Title : Computus cum commento. Add: [Johanness de Sacro Bosco?]: Algorithmus
Language : lat
Format : 4º
Place of Publication : Strassburg
Printer : Johann Prüss
Date of Publication : 1488-11-14
Binding : Contemporary German quarter calf over wooden boards with blind-stamped leather back, original manuscript title label on upper cover, spine missing.
Bibliographical Notes : 56 leaves; paraph marks and lines supplied in red; a few woodcut capitals, some spaces for capitals with guide-letters.
Provenance : Nicholaus Ellenbog 1494 (signature; inside the front and back covers).
ISTC : ia00732000
Reference : Goff A732, H 1109*, BMC I 121, GW 1951, IJL 014, IJL2 018
Shelfmark : 120X@752@1
Acquisition Year : 1988

 本書のタイトルである「コンプトゥス(Comptus)」とはラテン語で計算、特に時間の計算の意をもつ。太古の昔から、天文学者や数学者たちは天文周期表を計算し、より正確な暦を算出するべく努めてきた。特にキリスト教の教会暦では、復活祭の日を算出することはもっとも大切な計算のひとつであり、本書のような時間計算法を記した著作は必携の書であったと言える。
 私たちが小の月(月の日数が31日未満の月)を「西向く侍(に=2、し=4、む=6、く=9、さむらい=11)」と覚えるのと同様に、英語圏の文化では'thirty days hath September | April, June, and November...'という覚え方が古くから親しまれている。この起源はアニアヌスの本著作にまで遡るとも言われている。しかし著者アニアヌスについては、13世紀後半のフランスで活躍したベネディクト会の修道士であったとする説がある程度で、詳細なことは知られていないようである。
 アニアヌスによるこの著作は、パリの印刷業者G. マルシャン(Guy Marchant)によって初めて刊行されると、15世紀末までに40版近くもの版がパリやリヨンなどを中心に出版された。慶應本の1488年版は、シュトラースブルク(現・ストラスブール)でヨハン・プリュスによって刊行されたもので、この版にはサクロボスコが著したとされる『計算法』(De algorithmus)も一緒に印刷されている。サクロボスコはオクスフォードで教育を受けた後、アウグスティヌス修道会に入り、1220年頃パリに渡り同地で没した。パリ大学で数学と哲学を教える傍ら、球面に関する『天球』(Sphera mundi)(IKUL 017参照)、また本書に含まれる『計算法』(De algorithmus)などを著し、ヒンドゥー・アラビア算術をヨーロッパの学者たちに広めただけでなく、後世の科学史形成に多大なる影響を与えた。
 慶應本は印刷後に手書きでパラフマークが書き込まれ、フォリオ番号、欄外標題などには赤インクで線が引かれている。本文中に特に手書きの註釈や書き込みなどは見受けられないが、初期の所有者が表紙裏に署名を記しており('Nicholaus Ellenbog')、この人物がもう一つの印刷本(IKUL 023b)と一緒に本書を製本したことが推察される(IKUL 023、IKUL 023bの項も参照のこと)。インターネット版ISTCではヴォルフェンビュッテルにある図書館所蔵本の画像にリンクが張られており、慶應本と比較することも可能である。
 
 【参考文献】
 デイヴィッド・E・ダンカン『暦をつくった人々』松浦俊輔 訳 (東京: 河出書房新社, 1998)
 Dictionary of Scientific Biography, ed. by Charles Coulston Gillispie and others (New York: Charles Scribner's Sons, 1981), II
 
 (ST)

画像をクリックすると高精細画像が表示されます。  <執筆者・協力者一覧>  <略語一覧