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インキュナブラコレクション
[ Japanese / English ]
025 エウクレイデス(ユークリッド)『幾何学原論』 (ヴェネツィア、エアハルト・ラトドルト印行、1482年5月25日)
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front pde front pde a1v a1v
f1r f1r r7v r7v
upper cover upper cover lower cover lower cover
Author : Euclides [Euclid]
Title : Elementa geometriae. (Tr: Adelardus Bathoniensis. Ed: Johannes Campanus. With dedicatory letter by Erhard Ratdolt to Giovanni Mocenigo)
Language : lat
Format : fº
Place of Publication : Venice
Printer : Erhard Ratdolt
Date of Publication : 1482-05-25
Binding : 18th-century mottled calf with marbled pastedowns.
Bibliographical Notes : 138 leaves; many woodcut initial capitals and diagrams; contemporary manuscript annotations throughout.
Provenance : IN LABORE VIRTUS ET VITA EXLIBRIS (bookplate with inscription).
ISTC : ie00113000
Reference : Goff E113, HC 6693*, BMC V 285, GW 9428, IJL 135, IJL2 164, PP 96, T 25
Shelfmark : 120X@766@1
Acquisition Year : 1988

 ギリシャの数学者ユークリッド(c. 330-275 BCE)が著した幾何学の古典を、400以上の幾何学図形とともに初めて印刷したものが本書である。ユークリッドは、アテネにあるプラトンの創設した研究教育機関アカデミーに学び、エジプトのプトレマイオス1世に招聘されてアレクサンドリアにある大図書館兼研究所「ムゼイオン」で数学部門の長を務め、数学の発展に大きな足跡を残した。この原論は、ピタゴラス以来の古代ギリシャの幾何学研究の成果を一貫した体系のもとに集大成したものとされている。すなわち、いくつかの簡潔な公理や公準を立て、そこから500あまりの定理を導き出すという方法で幾何学を論理的に体系化したものであった。ユークリッド幾何学は中世、近世を通じて唯一の幾何学とされ、本書はその後の数学書のモデルとなった。19世紀になって原論の第5公準に対する疑問から興った研究は非ユークリッド幾何学を生んだが、それはこれまでのユークリッド幾何学とは別のものと考えられている。ユークリッドが主に平面や歪みのない空間図形を扱ったのに対して、曲面や歪んだ空間図形を扱ったものだからである。
 本書は、12世紀の学者アデラード・オブ・バースがアラビア語からラテン語に翻訳したものにノヴァラのカンパナスが注釈を加えた版を用いて、ドイツのアウクスブルク出身の印刷業者エアハルト・ラトドルト(c. 1443-1528)が世界で初めて印刷した数学書の初版である。現存する冊数は、この1482年版だけでも100冊を超え、当時、実際に印刷された数が、相当数に上っていたことが推測される。ラトドルトは、1476年頃ヴェニスに赴き、2年の間、メイラー、ロスレインと共同で印行を営んだ間に高度の印刷技術を身につけたと思われる。その後、1480年頃からは独立して印刷をはじめた。
 折記号π(パイ)1vに付された献辞には、ラトドルトがこれまで数学に関する印刷本がほとんど見られなかったことに気づいて印刷を計画したものの、はじめその図版の印刷に苦慮したこと、その後その方法を見出してからは文字の印刷と同程度に簡単となったと記している。大英図書館収蔵本などはその献辞が金文字で印刷されている。幾何学図形や線分は鮮明で、曲線を含めた複雑な図形がゴシック体活字の文言と組み合わせられて各ページの余白部分を広く占めている。図版は木版によるという見方もあるが、金属鋳型を用いたとする見方もあり詳細は不明。冒頭ページ(折記号A1r)の欄外装飾は技術の高さを表しているとされる。
 ラトドルトの印刷技術、とりわけ図解・木製の欄外装飾・装飾大文字などについて高く評価する意見がある一方、過大評価であるとする研究者もいて、その技術や印刷方法については明らかではない(BMC, V, xvii)。しかし、印刷業者としてのラトドルトは、何をいつどのように印刷するかを見定める先見性が卓越していたようである。
 
 【参考文献】
 斉藤憲『ユークリッド「原論」の成立』(東京: 東京大学出版会, 1997)
 Heiberg, I. L. 編『ユークリッド原論』中村幸四郎 訳 (東京: 共立出版, 1971)
 
 (SI)

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