2017/04/06 新たに 「慶應義塾大学メディアセンターデジタルコレクション」 を公開しました。

Digital Gallery of Rare Books & Special Collections
インキュナブラコレクション
[ Japanese / English ]
031b フランキスクス・マタラティウス 『六脚律と五脚律の詩文作成法について』 (ライプツィヒ、ヤコブス・タナー印行、1498年)
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E6v E6v E8v E8v
Author : Mataratius, Franciscus
Title : De componendis versibus hexametro et pentametro
Language : lat
Format : 4º
Place of Publication : Leipzig
Printer : Jacobus Thanner
Date of Publication : 1498
Binding : Volume of seven texts [031a-g] in a contemporary German half pigskin leather binding over wooden boards engraved with blind stamping, using a ms fragment, a fully functional hook-clasp fastening with ornamental engraving.
Bibliographical Notes : A-D6 E8; 32 leaves; marginalia by a contemporary hand in red; spaces for initial capitals with guide-letters, only the first initial capital (A2r) filled in red; printer's mark on E8v.
Provenance : Hartung und Karl, München 8 November 1988, lot 241.
ISTC : im00351100
Reference : H 10895*, IJL 216, IJL2 270, PP 44
Shelfmark : 120X@860@1
Acquisition Year : 1989

 本書は、15世紀末にラテン語で書かれた7編が集められた合本の第2書で、その内容はラテン語の六脚律と五脚律の詩文作成法である。編者はイタリアのペルージャ出身の人文主義学者フランキスクス・マタラティウス(1443-1518)である。彼は1486年から1492年にかけてペルージャの近くにあるシエナで「スタジオ」と呼ばれたギリシャ語とラテン語の学校で教師として雇われ、1498年から再び故郷ペルージャに戻り、ペルージャ大学にて修辞学や詩学の教師となった。専門はキケロを中心とし、ローマ作家と「フマニスタ (humanista)」と呼ばれたネオ・ラテン語(近代ラテン語)を研究する学者―例えば本書の第1書のマンキネルス―を広範に論評した。本書の最初ではローマの詩人オウィディウスに使われた韻律のことを解説している。序文には、このマタラティウスのテクストに、15世紀末に頻繁に古典作品を注釈したヤコブス・センティヌスという学者のDe quibusdem lyricis carminibusという著作も追加したとある。同じ組み合わせは1468年に、ヴェネツィアに印刷所を所有していたドイツ出身のエアハルト・ラトドルトによっても出版された。
 本書を出版した印刷業者ヤコブス・タナー(d. 1538?)は、ライプツィヒで活躍し、15世紀にこの地で最後の印刷所を開き、三つの異なる印刷商標を持っていた。ライプツィヒ大学の教師達と密接な関係があり、基本的に大学のために印刷業に参与したと考えられている。彼らの指導の下でタナーが出版したローマ時代の作家には、ホラティウスや本合冊本の第5書の著者であるティブルス、アリストテレスにキケロなどが挙げられる。またネオ・ラテン語の作家としては、ルカヌスやムティウス、本書のマタラティウスなどを含み、さらには自国ドイツ語の著作も数多く出版された。その仕事ぶりから、タナーが人文主義志向の教師たちの需要によく応えたことがはっきりと見て取れる。印刷業者がこのように大学教師と緊密な関係にあったという事実にもかかわらず、本書は学生の日々の授業ではあまり使われていなかったと推察される。行間には空白はあまりとられず、手書きの注釈も少ない。本書は実は学生用ではなく、教師達のためのものだったと考えられており、そのことは注釈によっても明らかである。特に注目すべき点が注釈の中に一つあり、それは 'lego, sedo, voco, rego' といった動詞の活用に関する書き込みである。これらの活用は15世紀には広く使われており、書き込みは『イアヌス』という文法教科書から取った部分だと考えられるが、教師達の授業準備のためのものか彼らの個人的な勉強だったのかは未だ判然としない (Black, p. 145)。
 
 【参考文献】
 Black, Robert, Humanism and Education in Medieval and Renaissance Italy: Tradition and Innovation in Latin Schools from the Twelfth to the Fifteenth Century (Cambridge: Cambridge University Press, 2001)
 
 (StN)

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