2017/04/06 新たに 「慶應義塾大学メディアセンターデジタルコレクション」 を公開しました。

Digital Gallery of Rare Books & Special Collections
インキュナブラコレクション
[ Japanese / English ]
033 ボエティウス 『哲学の慰め』 (ニュルンベルク、アントン・コーベルガー印行、1486年6月23日)
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Author : Boethius, Anicius Manlius Torquatus Severinus
Title : De consolatione philosophiae. (With commentary ascribed in the text to Thomas Aquinas)
Language : lat
Format : fº
Place of Publication : Nuremberg
Printer : Anton Koberger
Date of Publication : 1486-06-23
Binding : Modern antique style blind-stamped calf binding.
Bibliographical Notes : 71 leaves (of 74), wanting three blank folios 1, 73, and 74; elaborately rubricated initial capital on a1r, initial capitals filled in blue and red, sometimes tails extending to the margin; paragraph marks in red; some annotations of nota mark.
Provenance : 1. Johann Conrad Feuerlein, Nürnberg. 2. Arthur Gordon Rippey, Denver.
ISTC : ib00781000
Reference : Goff B781, HC 3378*, BMC II 430, GW 4537, IJL 083, IJL2 099, PP43
Shelfmark : 120X@895@1
Acquisition Year : 1993

 アニキウス・マンリウス・セウェリヌス・ボエティウス(c. 480-524)は、ローマの名門アニキウス家出身の政治家・哲学者である(IKUL 028参照)。信仰と理性を結び付けようとしたため、最初のスコラ学者とも呼ばれる。プラトンの「哲人王」を理想とし、プラトンとアリストテレスの全著作の翻訳と注解を目指していた。522年には二人の息子が同時に執政官に選ばれ、彼自身も宰相となったが、清廉潔白にして厳正な姿勢が災いして失脚する。523年頃にアルビヌス反逆事件の弁護を務めたことをきっかけに、524年に反逆罪および栄達のために魔術を使ったとして告発・幽閉され、欠席裁判のまま処刑された。六ヶ月とも九ヶ月ともいわれる長い幽閉中に著されたのが、5巻からなる本書『哲学の慰め』である。獄中に現れた気品ある女性すなわち「哲学」との対話という形をとり、神と世界の関連や真実の幸福について考察を加える。中世末まで非常によく読まれた作品で、ヨーロッパの思想や文学に大きな影響を与えた。多くの言語に翻訳され、邦訳もある。
 印刷業者コーベルガー(1440年代-1513)はニュルンベルクの裕福な商家の出身で、画家デューラーの名付け親でもある。1470年代に印刷所を開き、当時ヨーロッパ最大といわれる印刷所で、1504年に引退するまで約240点の書物を送り出した。1473年に初めて『哲学の慰め』を印刷しており、続いて1483年には小型版を印刷した。本書は1483年版の再版である。
 本書のレイアウトは、細かく区切られたボエティウスの本文を小さな文字で印刷された注釈が囲むというもので、注釈は中世のスコラ学者トマス・アクイナス(1225?-74)に帰せられている。最初の1丁は目次である。各表ページ(見開きの右)には、何巻であるかを示す欄外標題が大きな活字で印刷されている。活字はいずれもゴシック体である。
 ボエティウスの本文は詩と散文が交互におかれた形式で書かれている。注釈の頭文字のスペースの多くにはガイドレターが印刷されているが(c1 rとc6 vおよびd以降)、本文の頭文字スペースには一切ない。折記号に続く数字は、折丁aからcではローマ数字、折丁d以降はアラビア数字である。ただし、'i3'の折記号は印刷されていない。ほとんどの紙には、牛の頭から花がのびる意匠の透かし模様が入っている。
 慶應本は、白葉である第1, 73, 74葉を欠いているが、テクストに影響はない。欄外標題には朱が入れられ、下線が引かれている。文中には赤インクで段落記号(¶)が書き込まれている。本文の装飾頭文字は青インクで描かれ、1ページ内に複数の頭文字がある場合は2つ目に赤が使われる。注釈中の色使いはその逆である。頭文字はいずれもシンプルであるが、本文冒頭のCの装飾頭文字のみは、青い大文字に赤インクのペンワーク装飾が施されている。余白には、注意をうながすための手の記号が数多く書き込まれている。
 
 【参考文献】
 ボエティウス『哲学の慰め』畠中尚志 訳(東京: 岩波書店, 1938)
 ボエティウス『哲学の慰め』渡辺義雄 訳(東京: 筑摩書房, 1969)
 『世界古典文学全集26: アウグスティヌス・ボエティウス』渡辺義雄 訳(東京: 筑摩書房, 1983)
 
 (MA)

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