Digital Gallery of Rare Books & Special Collections
インキュナブラコレクション
[ Japanese / English ]
036 「42行聖書」 (マインツ、42行聖書の印刷業者[ヨハン・グーテンベルク]印行、[1455年頃])
 fol. 1r fol. 1r
fol. 5r fol. 5r fol. 129v fol. 129v
fol. 134r fol. 134r front pde front pde
upper cover upper cover
Author :
Title : Biblia latina, 42 lines
Language : lat
Format : fº
Place of Publication : [Mainz]
Printer : [Printer of the 42-line Bible (Johann Gutenberg)]
Date of Publication : [c. 1455-55]
Binding : Contemporary brown calf over wooden boards, blind-stamped (Mainz binding according to Paul Schwenke, Johann Gutenbergs […] Bible, Leipzig, 1923, p. 16); edges plain; round bosses preserved on both covers; two brass clasp fittings preserved on fore-edge of upper cover; four plaited leather button rabs survive on fore-edge.
Bibliographical Notes : 324 leaves; six-line initials mostly illuminated by a contemporary Rhenish (?Mainz) artist, in gold and colours.
Provenance :
ISTC : ib00526000
Reference : Goff B526, H 3031*, BMC I 17, GW 4201, IJL 065, IJL2 075, T 15
Shelfmark :
Acquisition Year : 1996

 「グーテンベルク聖書」「マザラン聖書」とも呼ばれる本書は、活版印刷術による西洋最初の本格的な書物であり、「印刷革命」の端緒を開いた。紙本と羊皮紙本がある。本文は4世紀に聖ヒエロニムスがラテン語に訳したウルガタ聖書に属する。初期刊本時代の約80点のウルガタ聖書の殆どは本書を受け継いでいる。
 タイトルページや刊記はないが、ドイツ・マインツ市のヨハン・グーテンベルク(c. 1400-68)が1455年頃に印刷したと考えられている。彼の生涯や活版印刷術の発明については断片的な裁判記録などから推測するしかないが、1434年頃からシュトラースブルク(現・ストラスブール)で秘密裏に活版印刷術の実験を進め、1444年頃に故郷のマインツに戻って印刷所を設立したと考えられる。実業家ヨハン・フストから資金援助を受けて本書の印刷を開始したが、完成間近に契約不履行で訴えられ、印刷機材を没収されたらしい。
 本書のレイアウトは写本を踏襲しており、ゴシック体の活字を用いて二段組42行で印刷されている。写本に倣って伝統的な省略記号や多くの異字体がある。書の開始や終了を告げる見出し、書や章の冒頭頭文字、章番号等のためには空白が設けられ、その挿入は購入者に任されていた。ただし、最初期に印刷されたページは40行(第1葉表~5葉表・129葉表~132葉表)・41行(第5葉裏)で、見出しも赤インクで印刷されている。しかし、すぐに二色印刷を断念し、行数も増やしたようである。さらに途中で印刷部数を増加したため、一部のページには二種類の版が存在する。全体の印刷部数は180部から200部程度と推定され、48部が現存している(うち12部は羊皮紙本)。1997年にHUMI(HUmanities Media Interface)プロジェクトが慶應本をデジタル化・公開して以来、2007年8月現在までに14部がデジタル化されており(9部はHUMIによる)、比較研究も進んできている。
 慶應本は、紙に印刷され、上巻のみ現存する。ほとんどのページが初版で、第1, 4葉には赤字印刷が見られる。第14丁(129-138葉)は、129・138葉が第2版、134葉が慶應本独自の差替版、残りが初版と変則的である。そのため129葉裏末尾の三語 'autem non erant' が130葉冒頭と重複し、前者には削除を示す点が朱書きされている。
 慶應本は、18世紀までマインツの修道院で所蔵されていた。金を使った豪華かつ洗練された装飾もマインツで施されたものである。装丁は、背表紙が補修されているほかは15世紀の状態を残しており、空押模様のついた革が木の板を覆い、前小口側には金属の留め金の受け口部分が残る。表紙の四隅と中央に革を保護するための金属の飾り鋲が付いており、寝かせて置かれていたことがわかる。前小口の4つの革ボタンは、書の冒頭部分にインデックスとして付けられていたものの残りである。慶應本は、マインツで印刷、装飾、製本され、所蔵されていた貴重な例なのである。
 
 【参考文献】
 富田修二『グーテンベルク聖書の行方』(東京: 図書出版社, 1992)
 髙宮利行『グーテンベルクの謎』(東京: 岩波書店, 1998)
 Ing, Janet, Johann Gutenberg and his Bible: A Historical Study (New York: Typophiles, 1988)
 
 (MA)

画像をクリックすると高精細画像が表示されます。  <執筆者・協力者一覧>  <略語一覧